田園調布ピアノクラブ公式HP

ピアノ
  1. ホーム  >
  2. ブログ    >
  3. 「良い演奏」ってなに?(1)

「良い演奏」ってなに?(1)

2020/6/27
(記:みかん3)

みなさん、こんにちは 運営メンバーのみかん3です。 ブログということで、日ごろピアノを弾くときとか、ピアノに対して思っていることを 気軽に気楽に(笑)書こうかな、と思った次第です。今回は私にとっての記念すべき第1 弾!ぜひ、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

このブログをご覧になっているということは、ピアノを弾いたり聴いたりする経験がある、ピアノが好き、あるいはなにかしらピアノに興味がある方かと思います。私がこれから書いていく内容もピアノ、特にクラシックを念頭に置いています。

ということで(?)いきなりですが、質問です。

「良い演奏とは、どのような演奏だと思いますか」

この問いを聞いて、皆さんは何が頭の中に浮かびましたか?好きなアーティストの演奏 でしょうか、それともいい演奏の条件が頭に浮かんだり、気持ちがぐっとこみあげてきたり、あるいは何も思い浮かばなかったり…。人それぞれだと思います。

それこそ「良い演奏の基準は人それぞれだ!」という人もいるでしょう。 確かに人それぞれです。でも「感動のポイント」は人それぞれあっても「良い演奏」は 特にクラシックにおいてはある程度条件が敷かれるのではないか、そしてこれはクラシッ ク音楽における「作法」のようなものではないか、と私は考えています。

音楽ですから、演奏者が楽しんでいることは大前提ですよ!嫌々やっているのではやる意味がないし、「作法」と聞いてガチガチになって楽しめなくなってしまったら、それは本末転倒です(魂の開放こそ芸術)。

では、なぜ「作法」が大事かというと、それは自分ではない他の人が作った作品を演奏するから、というのが一点。それから、社会で我々がより良く生活していけるようにルールや法律があるように、クラシック音楽にも決まり事が存在しており、そのルールの下で 作曲家は作品を作っているから、です。

ある曲を何の情報もなしに初めて弾いたり聴いたとき、頭のなかで映像が浮かんだり、 いろんな感情が込み上げてきたり、そんな経験のある人もいると思います。

その曲に対して初めて抱いた気持ちやイメージというのは、練習を続ける上でずっと大事にしてほしいと思うのですが、自分の気持ちや考えばかり主張していては相手と分かち合うことはできません。相手の話を聞いて、理解しなければならい、ということです。

演奏者はしゃべらぬ相手を理解し、その魅力を聴衆に届けなければなりません。それができる人が「良い演奏」家、ということです。 (こういう視点(聴点?)で演奏を聴いてみたら面白くないですか!?笑)

では、具体的にどのような視点なのか、以下の3点を挙げてみました。

1. 楽曲全体を見通した上で、細部まで把握している。(構成力)

2. 心の底から楽曲にのめりこみ、その曲の世界を生きている。(表現)

3. ピアノが十分に共鳴し芳醇な倍音が鳴っている。(音色)

【1. 楽曲全体を見通した上で、細部まで把握している】について、 曲の構造(骨組みの部分)を把握できているか、どうか、ということです。音楽でいう骨 組みとは簡単に言ってしまえば和声(感)と対位法のことです(イメージとしては建物の 壁をとっぱらって柱だけの状態みたいな)。なんか難しそう…と思われるかもしれません が(実際専門的に勉強しようと思うと奥が深いですが)、これは現代社会に生きる私たち にとっては、意外と体に染みついていたりします。

例えばカデンツでも完全終止を聴くと 「あ、終わった」と感じるとか、偽終止だと「あれっ?」と感じたり…(音を聴いてみる とわかると思います!)。

大体の皆さんが親しんでいるクラシック音楽は「調性音楽」というもので「主音」を中心 としたヒエラルキーの音楽です。使われている音によって緊張と弛緩を生み、それらを組 み合わせながら楽曲(いわば物語)を展開していきます。これはクラシック音楽でいうルールみたいなものです。 もちろん、この物語の解釈は一通りではなく、演奏者によって様々です。

筆者的に音楽の 構造といえば演奏家の中で真っ先にグレン・グールドが思い浮かぶのですが、グールドは 同じ曲を録音する際、毎回新しい解釈を試していたそうです(彼は演奏のことを「再創造 する」と考えていました)。

「楽譜通りに書いてあるからその通りに弾かなければならない」ではなく、なぜそのよう に楽譜に記されているのか、全体の文脈の中でこの部分はどういう意味なのか、感覚的に 掴んでいるものの関係性を認識しよう、それを全体という大きな視点と部分という小さな 視点で把握しよう、ということです。

小さな曲だったらたいして意識しなくても、まとまりのある演奏に聴こえるかも知れませんが、大曲になってくると冗長な演奏に聴こえてきますし、弾いている方も迷子になって しまいます(暗譜ができないとか…ね)。

楽曲の表面をなぞるだけでなく、骨組みの部分まで見通せてこそ、作曲家が作品に対して 何を思いどんなことに挑戦しようとしたのか理解できてくるのだと思います。

…気軽にと言っておきながら、だいぶ長くなってしまったので、【2】以降はまた別の記事で投稿したいと思います( ;∀;) 最後まで読んでくださってありがとうございました!では、また。